F先生の短編で好きなもの

F先生の短編は可能ならば全部読んで欲しいが可能ではないだろうからとりあえず私の好きな短編について書く。

 

『恋人製造法』

冴えない日常を送る少年がある出来事を機に好きな子のクローンと暮らすことになる、が……という話。これは小学生の時、F先生のSF(すこしふしぎ)少年短編集という文庫で初めて読み、今に至るまで先生の短編の中でもベスト3に入る程に好きな作品となっている。短編の中に主人公のありとあらゆる感情と体験と決意が詰まっている。最後は切ない終わり方を迎えるがこの少し切ない感じが余韻として心に残る。この話は今の流行りだと違った結末が望まれることもあるかもしれない。でもそれは違うんだよ〜〜。この終わり方だからこそ名作として光り輝くことを読み返す度に噛み締めている。これはもう何をおいても読んで欲しいお話。F先生で恋愛ものといったらこれか山寺グラフィティかかわい子ちゃんかマイロボットを勧めたいな。

 

『おれ、夕子』

亡くなった同級生を夜な夜な見かける噂があると耳にした少年。同時期に朝目覚めると自分が不可解な状況に置かれていることが多々あった。同じタイミングに起きたことから違和感を覚えた少年は謎を解決するため調査に乗り出す。

切なさの塊のような話。恋人〜よりもやるせなさというか涙腺刺激度が高い。読み返す度に泣いてしまう。主人公の少年は亡くなった同級生である女の子のことが好きだったんだけどそこへ更に他の人物の思いが加わることでよりSFとして話が広がりをみせるのが面白い。が、切なさも増すのがなんとも……。

 

『ユメカゲロウ』

これはF先生にしては珍しい話という印象のタイトル。ユメカゲロウという幻の虫を追う人とその周りのお話だけど、幻想的でたまに読み返したくなる。主人公のビジュアルが可愛くて(私の好みで……)好き。

 

ミノタウロスの皿』

今更語るのもねぇというくらいの知名度だけど好きなので書く。読んでくうちに主人公よりも読者の方がこれはもうダメだろうなと悟るよね。止められないんだよ……。最後のオチまで含めてF先生の演出が上手いなと感じさせられる。ミノアの準備過程の血液のところは今でもムズムズするんだ。

 

『カンビュセスの籤』

これもな〜〜語ってもねぇ?とは思わなくもないがやっぱ好きだし自分の好みの一角を形成した作品だと思っているのでやっぱ書かないとね。

生きるも地獄、死ぬも地獄で何も救いはないけれどそれでもここに至るまでにその道を辿った人たちのことを思うと死を選べずという状況が生み出されたのがすごいなーと思う。

 

『創世日記』

ドラえもんの大長編だともちろんどれも好きなんだけどワクワクしたタイトルの一つにのび太の創世日記がある。それを思い出す作品。というかまんまか。物語の向かう先は大長編と趣が異なるので楽しく読める。

 

『有名人販売株式会社』

シュールな話なのに最後はなんだかハッピーで結構好き。薄ら寒い話だしそう遠くない未来でこういうことが起こるんじゃないかなとも思うしよく出来てるなぁ。

 

『気楽に殺ろうよ』

物語のラスト後どうなってしまったか考えるのが一番怖いというかゾッとする。これって有名だと思ってたけれどどうなんだろう。衝撃は強い話だと思うんだよね。

 

『未来ドロボウ』

これはすごく良いお話。読んだことがない人には等しく読んで欲しい。歳を重ねるにつれてこの話がすごく身に染みるようになってる。

 

『ふたりぼっち』

ある時パラレルワールドの自分と出会うこととなった主人公と主人公の話。もう一人の自分に出会えて最初は楽しかったのにちょっとずつズレが生じていく過程の描写がさりげなくて上手で読んでるこちらも辛いねと思ってしまうものがあった。それが切ないんだけどそのまま終わらず先に進んでいくような終わり方を迎えるのが好き。

F先生は別れと成長の描き方のバランスが絶妙で素晴らしい。どっちが多過ぎても少な過ぎても成り立たない結末は地味だけど、辛いだけではない希望を感じさせられるところがあって読んでホッとする。そこが好きなんだよなと改めて感じたよ。

どんなご縁かこの記事を読んだ方がこの先F先生の短編を開拓する一助になれば幸いです。紹介した短編には大分偏りがあるが……上記以外も面白いのばかりなので読んでみてね。